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天使の歩廊 / 中村弦
天使の歩廊
− ある建築家をめぐる物語 −

中村 弦
新潮社 2008-11
(単行本)


[副題:ある建築家をめぐる物語] 施主の心を満たすために設計される奇跡的、魔術的な住居。 魂の在り処を異空間へシフトさせることによって、安寧と狂気の狭間を揺蕩うような至福に酔いしれさせてくれる終の棲家。 そこは設計図の呪縛から解放され、空間や時間の制約から自由になった場所・・ そんな理屈では説明のつかない建物を生みだすことのできる、異端の才能を持った1人の建築家の物語。
明治から昭和初期という、不思議な熱に浮かされた時代背景と、西洋建築が醸し出す美しさ、妖しさとが、とても相性よかったですし、時代を彩るモチーフを丁寧に織り込みながら、多角的な構成で描かれる趣向にも魅力を感じました。 鹿鳴館、凌雲閣、帝国ホテルといった、象徴的な建造物が登場するだけでワクワクしてしまいます。
それだけに・・ 文章が美しくないのが残念だったのと、登場人物に現代人の感覚が投影されている(ように感じた)ので、背景の中で浮いているっぽく映ってしまって、あまり時代の空気を感じることができなかったのです。
天使の存在が不気味な余韻を残しました。 人知を超えたものとの契約みたいな。“知的生命体の計り知れない陰謀”的なものをチラッと感じていた自分
天使の存在によって、天才であることに無理くり理由づけをしているみたいで、異能フェチとしてはそこのところも興が冷めてしまった・・という部分でもありました。
建築×ファンタジーということで、ちょっと期待を膨らませ過ぎていたきらいもあります。 スリップストリーム的な世界を夢見てしまって。 勝手に思い描いたお話と違ったからって文句を垂れてすみません。 普通に楽しめる作品なのですよ
心はスピンオフして、久しぶりに篠田真由美さんの建築探偵シリーズが読みたくなってきました。 どこまで読んだか忘れてますけど
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ジョーカー・ゲーム / 柳広司
ジョーカー・ゲーム
柳 広司
角川グループパブリッシング 2008-08
(単行本)
★★★★

かっけーなぁ。 この確信犯的ライトさが、思いのほかフィットしました。 第二次大戦前に創設された、スパイ養成学校、通称“D機関”に所属する、スパイ候補生たちの暗躍を描いた連作集です。 陸軍中野学校が下敷きになっているようなんですが、不勉強な自分としては、なんだかもうSF感覚で、疾風のように読み抜けました。
国のために命を捨てることが美徳とされた戦時下にあって、武士道精神を真っ向から切り捨てる冷徹な論理性に裏打ちされた合理主義。 高度な状況判断の下に、生き続けることを要求される男たち。 無名性が即ち己の証。 そこにはロマンすらない。 圧倒的な孤独を引き受ける究極のニヒリスト。
ファシズムの時の彼方で息をひそめるアウトサイダーたちにゾクゾクと痺れつつ、もう一方で、体制側から彼らを眺め、戸惑い、煩悶する者や、人間味を捨て去ることができず、舞台の外へ退けていく者も、また、よい。
なるほど! スタイリッシュという形容がぴったりです。 軽やかな渋みとでもいいましょうか。 血生臭さや泥臭さのない、クールなスパイ・ミステリなんですが、小粒でピリッと引き締まった端整な構成力に加え、上海やロンドンに舞台を移したり、当時の世界情勢や政治的背景をシニカルに掬い取るスパイスも機能して、意外にも?スケールと奥行きを感じさせる作品なんです。
でも敢えてこれ見よがしには描かない。 いつか柳広司さんの本気を見たい・・ような。 でもそれは是非、別の作品でお願いします。 本シリーズは、このスマートさを保ち続けて欲しい
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ハートブレイク・レストラン / 松尾由美
ハートブレイク・レストラン
松尾 由美
光文社 2008-07
(文庫)


駆け出しフリーライターの寺坂真以が書斎代りに利用するのは、東京郊外のとあるファミリーレストラン。 “幸薄そうな”従業員ばかりの醸し出す、ほの暗い雰囲気が影響してか、お客さんも幸薄げ&疎ら気味。 それには訳があるのですけど・・
このお店の主というか、貧乏神というか、守り神のように、奥の席にちんまりと鎮座しているお婆ちゃんひとり。 絵に描いたようなお上品でキュートなハルお婆ちゃんは、お客さん達の身のまわりの不可思議な出来事を綺麗に解き明かしてしまう、実は安楽椅子名探偵なのです。 殺人などの起きない日常の謎系ミステリの連作集で、ほっこり温かい作品です。
アラサーなお年頃の真以は、ちょっぴり慢性ブルーに陥っていて自信喪失気味。 仕事に恋に臆病になってしまう。 そんな真以の背中をそっと、じゃなくて堂々と押してくれるハルお婆ちゃんなのでした。 名探偵ぶりも然ることながら、柔らかい物腰でおっとりと押しが強いのです。 かと思うと、しゅるしゅると恥じ入ってしまったりして、珍妙に可愛いらしい、お嬢なお婆ちゃんキャラが光ります。
解説によると、オルツィの「隅の老人の事件簿」という作品のパロディになっているんですって。未読なもので残念ながら、そこんところの味わいは汲むことができなかったんですけど、逆に本歌の方に興味津々です。 終わり方からすると、続編の予感もアリっぽいので、期待して待ってます。
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ヒヤシンス・ブルーの少女 / スーザン・ヴリーランド
ヒヤシンス・ブルーの少女
スーザン ヴリーランド
早川書房 2002-06
(単行本)
★★★★

[長野きよみ 訳] 所在がわからなくなっているフェルメール作品とおぼしき、一枚の少女の肖像画をめぐる8話の短篇集。 現在から始まって、一篇ごとに過去へ遡りながら、やがて絵が生まれる原風景へと至るまで、三百年余の変遷、軌跡を逆に辿っていくリレー形式の物語集です。
最後の2話で、モデルになった人物と画家の想いが対になって描かれることにより、その真贋が明らかにされるという趣向なんですが、ほんとに“ヒヤシンス・ブルーの少女”という一枚の絵画が、この世の何処かにひっそり存在しているんじゃないかと、ロマンを掻き立てられてしまう作品でした。 因みに表紙の絵はフェルメールの名作“真珠の耳飾りの少女”です。
1話目の現代アメリカに暮らすドイツ系数学教師の物語を皮切りに、ナチスドイツ占領時のアムステルダムに暮らすユダヤ系オランダ人家族、ナポレオン支配下のオランダにやってきたフランス人貴族の妻、歴史的大洪水に見舞われた18世紀初頭を生きる農夫の妻・・
時代と所有者を転々としながらも、一枚の知られざる名画と共にあった人々の人生の断片が、神聖な光の帯のように繋がって、響き合っているかのようでした。
生きることの厳しさ、不毛さ、罪深さ・・ どの主人公も決して幸せとは言えないし、日々の生活に根ざした地味な風景が、どちらかというと淡々と描かれていくんですけれど、人々が、芸術作品と向かい合った瞬間に迸らせる精神の輝きを鮮明に写し取る確かさで貫かれているような印象です。 疲れて渇いた暮らしの底に秘めた瑞々しい強い想いが、一枚の絵画に呼応して、真珠のような光沢を帯び、物語を静かに覆っているかのよう。 
時代のフォーマリティに合わせて構築される世界は、どれも自然な気配のままに感じられましたし、ヒヤシンスやデルフト焼の青の彩度、白と黒の市松模様のタイル張りの床、開いた窓から差し込む陽光・・ さり気なく散りばめられたフェルメール的モチーフが本当に美しかったです。
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街の灯 / 北村薫
街の灯
北村 薫
文藝春秋 2006-05
(文庫)
★★★★★

ベッキーさんシリーズの完結編「鷺と雪」が刊行されたのですね。 図書館の予約に出遅れてしまいました;; その間に再読しておこうかなっと思い立って、久しぶりに手にした1作目。 やっぱり大好き♪ ガーリッシュ・ミステリの金字塔です。 と勝手に思っています。
チャップリンが来日し、犬養首相が暗殺された昭和8年という時代を生きる上流階級のご令嬢、花村英子と、そのお抱え運転手である男装の麗人、ベッキーさんこと別宮みつ子のコンビが、身の回りの謎や殺人事件の推理に挑む連作集。
震災からの復興を果たした帝都東京。 華やぎを誇る銀座界隈。 微かにきな臭い兆しをまとい始めた社会情勢も、まだ女学生やモダンガールの身辺を脅かすには至っておらず、文化・文明を謳歌する気風には、春風の薫りを運んでくるかのようなキラキラとした時代の息吹を感じます。
本の達人である北村さんの映し出す昭和初期の風景は、視界の隅々に至るまで真摯な考証によって支えれていて、まるで見てきたかのような鮮度と繊細さでもって読者を包み込んでくれます。 本筋以外の背景描写や文芸トリビアでふんだんに遊びながら、気づけば本格ミステリ部分と絶妙に連携しているという贅沢な作風は、北村さんの真骨頂かなって思います。
19世紀のイギリスにおいて、上流階級のスノビズムを完膚なきまでに叩いた作家であったサッカレーの「虚栄の市」のヒロインに重ね合わせて、別宮(べっく)みつ子を“ベッキーさん”と呼ぶ英子なのですが、それは彼女の心に灯った嘘のないささやかな敬意から生まれた尊称であることが、物語全体に隠喩として漂い続けているんです。 薄っぺらい小奇麗なものを描いているのではないことが、じわじわと、時にズキンと伝わってきます。 ナポレオンでさえ振り落とされた時代という駻馬。 何を拠りどころに何を信じて生きたらいいのか・・ 彼女たちに待ち受ける未来を思うと、胸がいっぱいになってしまいます。
でもでも〜 ベッキーさんが侯爵家の桐原大尉と見つめ合うシーンでは、脳内を満開の白薔薇が飛び交ってしまいます 愛すべき凡人の雅吉兄さんもさり気なくお気に入りw
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カラクリ荘の異人たち / 霜島ケイ
カラクリ荘の異人たち
− もしくは賽河原町奇談 −

霜島 ケイ
SBリエイティブ 2007-07
(文庫)
★★

[副題:もしくは賽河原町奇談] きゃっー 好きかも。 好きですw 家庭の事情で下宿生活を送ることになった高校一年生の太一くん。 電車とバスを乗り継いでやってきた賽河原町は、町中を妖怪たちが闊歩しているし、下宿先の空栗荘では、風変わりな同居人たちにお出迎えされてしまいます。
人と異形が交差し、この世とあの世の狭間に揺れる奇妙な町での不思議なふれあいを通して、少しずつ忘れていた感情を取り戻し、心の傷を癒していく太一くんなのでした。 荒療治というほどではないんですけど、エキセントリックで愛嬌のある面々に、ちょっかい出され〜の、いじくられ〜のしているうちに、心が良い方へ転がり出すんですね。 太一くんの小さな一歩となる心の変化を捉えた描き方も素敵でした。 内面描写があっさり控え目で、でもキラッと描かれていたところが好きです。
あったかいなぁ。 守られてるなぁ。 不覚にもチビッと涙ぐんでしまいました。 ミギーさんのふんわりと優しい水彩画が、お話にぴったり♪ 陽炎のようにゆらゆらと朧な輪郭の中に、日本古来の仄暗く湿った異界がぽっかりと姿を露わにし、澄まし顔して穏やかに息衝いているのです。
鬱蒼と樹木の茂る道。 爆ぜるような蝉の声。 梢の向こうの真っ青な空。 風鈴の音色。 軒下の吊り燈篭。 蛍の踊る水面。 盆祭りの太鼓の響き。 電燈を灯した夜店。 からころと下駄の音・・
ほんのひと夏の風景なのですが、妖しく美しい郷愁と、妖怪や同居人たちの、飄々としながら人懐っこいモーションに心を擽られました〜。
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せどり男爵数奇譚 / 梶山季之
せどり男爵数奇譚
梶山 季之
筑摩書房 2000-06
(文庫)
★★★

せどりの名人であることから“せどり男爵”の異名を持つ初老の紳士が、古書業界という魔境を華麗に泳ぎ回りながら遭遇してきた、古書にまつわる数々の奇譚や秘話が集められています。
せどり男爵が、とある文士に語って聞かせるという体裁で綴られていく連作短篇集。 生き馬の目を抜く海千山千の業界に巣食う魔に憑かれた人々の狂気と紙一重の情熱が蠢いていて、そこにはふと哀愁が見え隠れし・・ 異境を満喫して参りました〜。
“せどり”とは、ある店で安く買った古本を別の店で高く売って利ざやを稼ぐことを生業とした人種を差す古本業界の用語・・というのは何となく知っていましたが、お金儲けと、掘り出し物を見つける醍醐味との相乗効果から、一度ハマったら抜けられない、ロマンを掻き立てられずにはいられない稼業なのだろうなぁ〜というのが、読んでいて伝わってきます。
金の卵となる端本をクズ屋の立場で発掘した時の快感や、竈の焚きつけや便所の目張りにされている光悦本を痛恨の想いで眺めたり、蔵書票に託された謎解き、シェークスピアの初版本をめぐってユダヤの豪商と渡り合ったり、本に対する偏執的な愛着を持ったビブリオクレプトマニアによる書物破壊や書盗に絡んだ事件、圧巻は装丁の虜となった男の妄執・・
せどり男爵の武勇伝のような調子で始ったのが、段々と常軌を逸した愛書家、蒐集狂たちの奏でる狂想曲さながら、ホラー色を強めていく展開にも惹き込まれ、ゾクゾクさせられます。
1970年代の作品なのですね。 勿論、古書を取り巻く現状は、当時から鑑みて大きく変化しているんだと思うんですけど、本好きにとっては、本書こそまさに、古くなってなお価値を増していくお宝本かもしれません。
梶山さんは社会派のルポなどもお書きになっていた方らしいのですが(無知;;)、世の中を見据えようとする冴えてクールな眼差しというか、ジャーナリスト的感性が作品の中にも顕れているような印象です。 そしてそれは、決して古さを感じさせません。
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灯台守の話 / ジャネット・ウィンターソン
灯台守の話
ジャネット ウィンターソン
白水社 2007-11
(単行本)


[岸本佐知子 訳] スコットランドの北西の寂れた港町で、母を失い孤児となった少女シルバーは、灯台守の不思議な老人ピューに引き取られ、一緒に暮らし始めます。
灯台守の大切な仕事のひとつである“物語ること”を通して、物語が時間を照らす一条の光となって、人を力強く導くことができるのだと感じ取っていくシルバー。 あたかも灯台の光が、底知れず暗く沈む夜の海原を照らし出し、疲れ果てた船乗りたちに希望を与え続けるように。
「ジキル博士とハイド氏」の著者、ロバート・ルイス・スティーヴンソンや、「種の起源」を発表したチャールズ・ダーウィンといった実在の人物や、オペラ「トリスタンとイゾルテ」の挿話が配置されたり、100年を超える時間軸の往来とともに、幾つもの変奏を織り込んで、様々なモチーフを自在に泳ぎながら繰り広げられる物語世界は、光と闇とが交錯するアレゴリカルな風味に彩られていて、やや難解ではあるのですが、不思議と素朴なんです。 概念に一貫性があって、実体を持った言葉としてストレートに響いてくる。
愛に怖気づくな。 正直であれ。 まるで人生の賛歌みたいな物語でした。 心の闇は物語ることによって、深い慈愛の光の中に解き放たれていくかのようです。 それらは繋がり、広がり、宇宙という広大な記憶の海に溶けていく・・
愛は、たとえて言うなら自然の猛威だ――太陽のように強烈で、不可欠で、非情で、巨大で、途方もなく、温暖でありながら灼熱であり、生命をはぐくむいっぽうで大地を干上がらせる。そしてそれが燃えつきるとき、この地球も死ぬ。
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カフェ・コッペリア / 菅浩江
カフェ・コッペリア
菅 浩江
早川書房 2008-11
(単行本)


近未来の日常を描いた7篇の短篇集。 人間とAI による混合スタッフがもてなす、お洒落な恋愛談議カフェ“コッペリア”で、虚々実々の果てしない言語空間の狭間に漂う青年を描いた表題作。 バレエの“コッペリア”を模して、中二階の出窓には本を読む美少女人形が設置された白い瀟洒な洋館という魅惑的な舞台。 連作でもイケそうな気がします。 個人的にはそんな連作集を読んでみたいなぁ。
他には、閉鎖型の生命圏実験施設を舞台に疑似家族の人間関係を描いた物語や、ウサギの改良種で、体毛に香りを定着させることのできるアロマ・ペットをめぐる物語や、TB(テストチューブ・ベビー)の恋、老人の友を謳う機械の“笑い袋”が綾取る家族ドラマなどなど。
近未来のフォトジェニックな風景は、やはりSFを書き続けてこられた菅さんの自家薬籠中の世界だなぁ〜と感じ入ってしまいます。
でも、悲しいかな今回は乗れなかったのです;; 単にモチベーションの問題なのか、自身の趣味が変質してしまったのか。「永遠の森 博物館惑星」や「五人姉妹」あたりは大好きだったんですけど。
シリアスな社会問題が提起されていたり、アイデンティティに根ざしたデリケートな傷が扱われていたりするのですが、その割に結末が安易なのが引っ掛かってしまったのと、あまりにも繊細というか神経質というか。 腫れものに触るような人間関係、他人や自分の心理を見張り続けているような内面感情が多かったせいか、息苦しくなって疲れてしまいました。
分析して型に嵌めて安心を得たい。 分析しきれないもの、型に嵌められないものに対する耐性が哀しいくらい弱っちぃ・・ 科学技術や機械文明の落とし穴なのでしょうか。 ここに描かれているのは平和な未来なんですが、なんだか人のナイーブさが怖いです。 わたしの中の拒否反応は、きっと近親憎悪に違いありません。
最終話の「千鳥の道行」が一番好きでした。 舞踊の稽古に役立てられているロボット“木偶助”の舞台装置としての使い方がよかったし、ラストに遊び心というか、図太い神経の片鱗がチラッと垣間見えてホッとしました。
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地球人のお荷物 / ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン
地球人のお荷物
− ホーカ・シリーズ −

ポール アンダースン & ゴードン R ディクスン
早川書房 2006-08
(文庫)


[稲葉明雄・伊藤典夫 訳] 1950年代に発表された作品らしく、自信に満ち溢れたアメリカを感じます。 そして人類の栄光と矜持。 未来に夢が詰まっていた頃の懐かしいSFの香りです。
物語の中の未来の地球は、後進惑星の文明化を推し進めています。 ノブレス・オブリージュの精神というと、嫌味に感じてしまうかもしれませんが、地球人アレックスと、彼が全権大使として赴任したトーカ星の原始民族のホーカ族たちとの交流には、温かい気持ちが呼び起こされます。 悪者にされてしまった爬虫類系のスリッシー族はちょっと可哀想なのですが^^;
ホーカ族は友好的な民族で、その外見は身長1mくらいの動くテディ・ベア♪ 地球から持ち込まれた文化を熱狂的に歓迎してくれるのは嬉しいのですが、小説だろうと映画だろうと、虚実入り乱れてそっくりそのまま吸収してしまいます。 カリブの海賊やホームズ、ドン・ジョヴァンニ、西部劇の世界が忠実に再現されて、街ごとテーマパークのようになってしまって、ホーカたちはその中で、役になりきることに陶酔しております。
彼らを上手く操るためには同調するほかなく、調子の狂ってしまうアレックス。 おイタちゃんたちとのごっこ遊びは徐々にエスカレートしてゆき・・といった具合で繰り広げられるドタバタコメディで、しっかり元ネタのパロディにもなってるんですね。
ロマンを追及して止まない“ホーカ気質”に翻弄されながらも、彼らへの愛情が深まっていくアレックス。 そんなことはお構いなしのやんちゃで可愛いホーカたち。
挿画のイラストがやばいです。 反則ぅ この子たちがすっかり頭の中に居座ってしまいました 七人の小人のように、ホーカを並べて飾りたい。 シャーロック・ホームズのコスチュームと、フック船長とレポレロと・・って、思わず変な方向にウツツをぬかし始めてしまいました。 スリッシーも一緒に飾りたい。ダメ?
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