スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - |
私の嫌いな探偵 / 東川篤哉
烏賊川市シリーズの短篇集第二弾。 今回は鵜飼探偵とオーナーの朱美さん編で、探偵助手の戸村くんはオマケ程度。 なんかもう“いらない子”気味。 戸村くんには悪いけど、こっちのほうがウケがいいんだと思う。 あれあれ2人いい感じじゃね? みたいな。 実際外から見ると“仲の悪いカップル”に見えるらしいし(笑)
作中、鵜飼探偵もめっちゃ懐かしがってましたが、砂川警部&志木刑事コンビが久しぶりの登場です。 メインキャラ全員集合的な文脈での起用とみえて、特にいい仕事はしていなかったけど、全体にわちゃわちゃと賑やかになりました。 前作みたいなストイック?マニアック?な雰囲気のほうが個人的には好みではあります。
ほぼ朱美さん視点で進行していく5篇。 前回の短篇集は寄せ集め感がありましたが、今回は短期間の短篇が順にラインナップされていて、毛色が整い、全体に統一感があったような。
超常現象ものや生物学を取り入れた素材が印象的。 相変わらず鮮やかな映像を結ぶトリックが東川さんらしい。 毎回クリンヒットを打ち続けてくれることに感謝。 伏線を散らした読者参加型の謎解きタイプとは少し違うんだけど、なんだろう・・ 構築美?を愛でるタイプっていったらいいか。 自分が少数派なのは理解しておりますが、東川さんの整合性を備えた(リアルという意味ではない)華のある物理トリックが大好きで、今回もメイントリックを中心として連関的に組み立てられた破綻のないプロットを堪能させてもらいました。
「烏賊神家の一族の殺人」は、烏賊の意匠を凝らしに凝らした烏賊づくしなミステリでした。 探偵バトンタッチの巻なんですが、もしや神社の階段落ちで天啓を授かってしまったんでしょうか。 「死者は溜め息を漏らさない」は珍しく鵜飼探偵がエモい。 惚れられちゃうよってくらい二枚目路線気味で、なんだよ探偵そんなキャラかよw テコ入れかな?(笑) まぁ、相棒が朱美さんじゃ、かっこよくなっちゃうか〜。



私の嫌いな探偵
東川 篤哉
光文社 2013-03
(単行本)

| comments(0) | trackbacks(0) |
アンの想い出の日々 / ルーシー・モード・モンゴメリ
[村岡美枝 訳] 亡くなる1942年に完成したモンゴメリ最後の作品。 アン・ブックスの最終巻を、作者が望んだかたちで刊行した初めての完全版。
ブライス医師一家の噂話や消息が聞こえてきたり、時には脇役として登場もするサイドストーリーと、自分自身や戦死した息子ウォルターの書いた詩をアンが家族に読み聞かせる炉辺荘の団欒風景とを交互に綴る趣向で、内と外の視点からブライス家を捉えています。 二部構成のうち第一部は第一次大戦以前、「炉辺荘」「虹の谷」辺り(子供達が小さかった頃)の時代、第二部は第一次大戦後から第二次大戦勃発前後の「リラ」以後(子供達が成長してから)の時代が描かれていて、ことに内側視点における二つの時代の明暗の落差が痛ましい。
愛と友情と信仰、清らかな歓びと誠実な悲しみ、美しい自然と憩いの家、崇高な理想と色褪せない思い出・・ 光の糸が紡ぐ旧世界の“明”を謳い上げた、白日の夢のようなアン・ブックス。 それはまるでアンが掛けた魔法のような物語でした。
でも、第一次大戦中を描いた(時系列上の)最終巻とされてきた「リラ」を読んだときの、侵されたくない世界が変な風に侵されたような落胆に近い戸惑いが苦い記憶となってしこりを遺していました。 愛国心と自己犠牲の物語で幕引きだなんて・・ 身の置き場がなくて。
本篇がボーナストラックなどではなく、正統な最終巻であったことを慶賀。 各短篇は、ややトーンは暗いものの、奇跡や運命や天邪鬼的な心理の綾が采配を振るう構成力の巧みなロマンスが中心で(それでいながら、子供と老人を描かせたら女史の右に出る者はない)、諷刺の効いたユーモアなど、慣れ親しんだ風合いが感じられるのですが、短篇の合間に挟まれる詩篇とブライス家の団欒パートの異色さに殊更目を奪われます。 第一部でのアンとギルバートのイチャラブが(もぉー、貴方たちだから許す!)、ファンにはご褒美なだけに、第二部の衝撃が尋常でない。
ひょっとするとカタストロフ(の予兆)かもしれないと不吉なことを思ってしまった。 違うかもしれないが。 でもこのラストが胸に突き刺さり、強く惹かれずにはいられないのです。 怯えるほどなのに。
思い返せば・・ 完璧なる少年が、キューピッドの矢に射抜かれたように、たった一人、振り向かせることのできない光の子たる少女に恋をして、少女に相応しくあろうと誓い、自らを高め、時を耐え、試練を乗り越え、愛を勝ち得るその一方、ひとたび愛に目覚め愛を与えたかつての少女は、かつての少年の行く末に寄り添い、道を照らす永遠の女神となる・・という神話のように揺るぎのない一生もんのラブストーリーがゾクゾクするくらい好きだった・・のに。
アンは死んでしまうかも。 読み返せば読み返すほどその考えが頭を離れず怖くなった。 わたしの思い込みであって、当然いろんな解釈があるべきだと思います。 あーでも。 以下は妄想に過ぎません。
ウォルターの死を愛国心で贖おうとする思いは、アンにとって自己暗示に過ぎなかったのではないか。 まだ暗示から覚めやらぬ第一次大戦終結直後、束の間、癒えに向かう兆しさえ覗かせていた心が暗転したのは、戦地から遅れて届けられたウォルターの詩稿、「余波」に触れたせいではなかったろうか。 アンはその時、“偉大なる戦争”と決別したのでは・・ 独り、静かに。
以降のアンは、愛情に満ちた家族の中にあってさえ孤独です。 第二次大戦の軍靴の音が、一層深く彼女を絶望へと駆り立てていくという事情も窺われるように思われ、日増しにウォルターへと傾斜し、ついにラストの詩「余波1」と「余波2」で完全に2人はシンクロしてしまったかのよう。
悲しみを何かと結びつけることなく、ただ悲しみとして一心に見つめ、人間が生きるために備えた“忘れる力”を拒絶したアンと、“忘れる力”を味方につけ、春の到来を信じ、命ある日々を友とすることを疑わないギルバート。
アンに向けたギルバートの最後の台詞は、軽口であるはずはなく、戯れに見せかけた心からの問いかけだったとわたしは思いたくて、ただ、必ず支えてみせるという強い確信があったのか、不安と苦しみに苛まれていたのか、どちらだったのだろう。 どちらであっても悲しい。
≫ 僕は病気と苦痛と無知に挑戦するんだ・・・それはみんなつながり合っている一族なんだよ。僕はね、アン、この世界にある、誠実な、貴重な仕事に加わって自分もその一部分の使命を果たしたいんだ。
≫ あたしは人生の美しさを増したいと思うの。自分がこの世に生きているために、ほかの人たちが、いっそうたのしく、暮らせるというようにしたいの・・・どんなに小さな喜びでも幸福な思いでも、もしあたしが、なかったら味わえなかったろうというものを世の中へ贈りたいの。
<第2巻「アンの青春」より>
ギルバートとアンというのは・・ 実質的な繁栄と美しく生きるという哲学の、要するに文明と詩の幸福な結婚の象徴だったのかもしれないと、ふと思うのです。 どちらかに偏ったり、繋いだ手と手が離れてしまったら、まったき世界の魔法は破れ、呆気ないほど脆く崩れ去ってしまう。
変わりゆくもの、変えられないもの、変えなければならないもの、変えてはならないもの・・ 眼の前で進行していく歴史は最も鮮明であるはずなのに、その判断はあまりに危うい。 人々が選び取る未来への憂いが刻印されていたのではなかったろうか。
第1巻が児童文学の名作なら、この第11巻は純文学の名作だったとわたしには思えたのです。 第二次大戦最中に行われた重い意思表示であったと。


アンの想い出の日々 上
ルーシー モード モンゴメリ
新潮社 2012-10 (文庫)
関連作品いろいろ
★★★★★
| comments(0) | trackbacks(0) |
菩提樹荘の殺人 / 有栖川有栖
菩提樹荘の殺人
有栖川 有栖
文藝春秋 2013-08
(単行本)


“若さ”で淡く彩色したという、作家アリスシリーズの四篇を収めた中短篇集。 過去編? みたいな情報を小耳に挟んだので(正確には「探偵、青の時代」が回想もの、「菩提樹荘の殺人」に回想シーンあり程度)、まさか火村先生のトラウマ明かされちゃうの? とびびったんですがセーフ。 もう機を逸してる(うよな気がする)し、今更下手を打ってくださいますな、と思ってたけど、いつか“知る”瞬間が訪れたその時は、よしわかった!書いてくれ! と腹をくくりました あとがきが沁み沁みよかったです。 シリーズに対する有栖川さんの愛着に絆されてしまった模様・・
少年犯罪とヘイトクライムを扱った「アポロンのナイフ」は、索漠たる社会の病理を映し込んだ(殆ど)社会派ミステリの風格。 whyに問題提起を織り込んだインパクトのあるアイデアで、厭なもたれ感も悪くないと思う。 ただ、こういうシリアスな重さを求めて読んでないからなぁ。 やや自分の手には余り気味。
大衆文化を題材にした「雛人形を笑え」も、平和なご時世の心の隙間に食い込むような、えぐ味のあるストーリーではあったと思う。 が、しかし・・ 有栖川さんの仕事とも思えない、らしからぬ非本格。
「探偵、青の時代」は、大学時代の火村英生が、勉強会パーティに集った犯罪学科の友人たちの前で謎解きを披露する名探偵誕生前夜のエピソード。 サザエさん方式の世界にあって、本格作家の強みを活かし、背景を捨象する“過去”の描き方に納得。 伏線ד天の配剤”で偶然性を回避させつつ、そこに和み系の擽りを添える筋立ての冴えがよいです。 なーにが落とし物じゃ、くッ♪ それを見抜けるのはアリスだけってか結婚しちまいやがれ大好きw でも、この脱俗感やキャラ萌え感はシリーズの一構成要素にすぎず、社会性や群像を重視した前半二篇のような系統や両成分のブレンド比率各種混ぜ込みながら書き続けることで、シリーズならではの奥行きが自ずと生まれて来たというもの。
最終篇の表題作「菩提樹荘の殺人」は、年を取らない世界に封じ込められて、眩しさと幾ばくかの残酷さをまとい超越的に“今”を生きているエバーグリーンな二人が、年を積み重ねることの真っ当さを語らい、思索するところにズキンとする切ない痛みがあって、そこが白眉な一篇。
| comments(0) | - |
高原のフーダニット / 有栖川有栖
高原のフーダニット
有栖川 有栖
徳間書店 2012-03
(単行本)


作家アリスシリーズの中篇集。 中篇のみの三篇構成は初なのね。 2012年はシリーズ20周年でしたか。 火村英生は使い減りがしないそうで ずっと働かせる宣言いただきましたー。 慶賀
「オノコロ島ラプソディ」は、基本アリバイ崩しの淡路島トラベル風ミステリ。 アリス置いてかれたw これはもしや、火村先生とアリスはいつも一緒にプライベート旅行してるわけじゃないよアピールかしら?
自分は叙述トリックが大好きで、それは思うに “文章で”惑わせるという、舞台や映画では成し得ない、小説だけに許された奥義のようなものを感じて、本読み心を擽られるからなんだけど、その醍醐味は作中人物と読者間のズレ、むしろ両者が一体になれないところにあるのだから、“読者と一緒に作中人物も驚ける叙述トリック”なんて矛盾の極み、出来損ない、邪道だー!と叫びたくなっちゃうよ でも、アリスが目指したいなら読んでもいいよ ともかく、“珍妙なトリック”も(理屈では)無理がないよう筋立ての中に捻じ込んでるのは流石で、それよりなによりメタを仕掛けてこの難問を上手く料理したなと思った。 “悪い見本”というのをおちゃらけてやってみました的な妙趣。 あと、野上刑事のジョーク二連発に吹いて、三毛猫アリスにクスクス〜♪
アリスが見た十の怪夢が漱石の「夢十夜」風に綴られていく「ミステリ夢十夜」は、殆ど座興なノリの不条理ナンセンスもの。 このシリーズのカラーである“普通の本格”を逸脱する手法として夢設定を用いたところが反則ではあるけれど、もう反則ってレベルじゃなくてノン・ミステリ。 リアルという縛りから解き放たれた十篇十色のトリップ感。 深層心理モドキが見え隠れする感触と、アリスったらこんな夢見てるの?w って冷やかし根性とが相俟って、これはこれでやたら美味しかった。 そこかよ!な第八夜がお気に入り。 あと、ラストの“白いもの”がジワジワくる第五夜^^
最初の二篇は言わばイロモノで、最終篇の「高原のフーダニット」のみが正統派路線。 タイトル通り、whoに焦点を絞った本格でした。 誰か? を特定するための推理の性質が極めて記号的(アトリビュート的と言うべきか)で、個人的には、こういうちょっと物足りないくらいシンプルな様式志向は趣味に適うので楽しめたし、長閑な高原でクローズドチックに展開される雰囲気も好み。 ただ、インパクトは前二作の圧勝。 完全に喰われてる
| comments(0) | - |
中二階 / ニコルソン・ベイカー
[岸本佐知子 訳] 大学を出て会社に就職して2年になる“私”が、昼休みを終えて一階のロビーから中二階のオフィスへのエスカレーターを昇る束の間・・というのが小説のメイン舞台ってことになるんですかねぇ、一応。 その間の一寸の意識を、5年後の“私”が回想してるんですが、そこに5年後の“私”の現在進行形の意識も紛れていて、呼び覚まされていく想念の連鎖は脱線に次ぐ脱線を続け、エスカレーターのカットにどうやって戻るのか、いや、もう戻らないんじゃないのかと危ぶむことさえ忘れた頃にちゃんと戻るんだよねこれが。
本文の半分くらい(?)は脚注が占めていて、脚注も含めての小説なんです。 手にしているのは、切れた靴ひもの代わりに買った新しい靴ひもが入った(CVSファーマシーの)小さな白い紙袋と、ペンギンのペーパーバック(読みかけのマルクス=アウレリウスの「自省録」)。 目の前には中二階へと続くエスカレーター。 そこから派生していく意識が、本文を浸蝕するほどの脚注となって繁茂して、あれ? なんでこんな話になってんの? 何の話だったっけ? 自分は今どこにいるの? みたいなコンテクストの迷宮で遭難しそうな愉しさを満喫しました。
主人公の思弁小説という感じなんだけど、この彼の、些末な事物へ注がれる偏愛ぶりときたら! ヒトの行動、モノの仕組みや形状など、そこ? っていう細部や局所に異様にフォーカスされた観察と思考が炸裂していて、比喩表現や修辞のセンスに心擽られる文章も手伝って、ツボリどころは数知れず。 軽いパラノイア気質かってくらい偏執的かつ妄想的なんだけど、そんな自分を楽しんでいるドライさが心地よく、安心して付き合えるタイプの愛着の湧く主人公です。 特に彼の小市民的な性質は日本人なら身につまされる人多いかも。
自分に対しても他人に対しても、ドロドロとした人間臭い感情がおよそ欠落していて、人付き合いの希薄さ、干渉の乏しさが都会的で現代的な印象を残すのも事実。 でも、読者からどう見られようと、そこに悲観的な色合いはなく、常にポジティブシンキング。
人類共通ともいうべきあるあるネタにニマニマしながら、若干の時代のズレやお国柄の違い(80年代アメリカのエネルギッシュな消費社会)なのか、あるいは個性の違いなのか、時にはないない! とか、ほぉーとか、ポカン・・とか、そんなリアクションが雑じるのもまたよし。 めくるめく言及される企業や商品に対するイメージづけができなくて歯がゆいんですが、ネタが根本的にガセではないというのはわかりますし、そういう意味では身辺雑記風エッセイの要素もあるでしょう。 実際、これ読んでて、訳者の岸本さんのエッセイが頭を過ぎった^^ 岸本さんご自身も、この本から影響を受けたお一人なのかもしれない。 今も確実に継承され進化している“極小(ナノ)文学”の草分け的作品といえるのではなかろうか。
なんでもないオフィスの一風景が、彼のフィルターを通すと、空気を壊さないことで成り立っている奇妙な空間に変貌する感覚が凄く面白かったし、物質の表面に刻まれた溝やミシン目の美しさを讃えたり、シャツを裏返すテクニック、ストローやシャンプー史の講釈、ホチキス、便座、自動販売機、ペーパータオルのディスペンサー、紙ナプキン容器、耳栓、ポップコーン・・などなど、ミクロの目線で語り倒しています。 牛乳容器の変遷をめぐるセンチメンタリズムや、眠れない夜に数える羊の妄想がお気に入りです^^ あと、脳細胞は死んだほうがいいという四つの根拠はいただき! 我が身が嘆かわしくなったら、この論法を思い出して励まされようと思う。
記憶に留まることもなく消えてしまう日々の些細な想念や、地道で実用的でありながら余りにも小さ過ぎてニュースで報じられることもない文明の利器が、人生や社会の大きな進歩を深いところで支えているのだという信念。 万人の言われざる思いに形を与え、歴史に記録されることのめったにない日々の生活の手触りという無言の民間伝承を浮き上がらせて見せてくれたような・・
時代とは常に真理探究の“過渡期”なんだなぁーと、その流れの一部を担って生きてるんだなーと、ふと沁み沁み。 世の移ろいやすさを無常観に逃げて思考停止しないところが格好良かった。 あるいは、中二階という納まりの悪いフロアが、発展途上のメタファーだったのかな・・ 青々しさ、甘酸っぱさのようなものが微量に漂っていた感触もありました。


中二階
ニコルソン ベイカー
白水社 1997-10 (新書)
関連作品いろいろ
★★★★
| comments(0) | trackbacks(0) |
變愛 / 浅岡キョウジ
變愛
− 奇妙な恋人たち −

浅岡 キョウジ
徳間書店 2013-09
(単行本)


[副題:奇妙な恋人たち] 表紙が素敵で堪らず購入。 フェティッシュな愛のかたちを描く7篇のオムニバス短篇集。 眼球愛好、ショタコン、言葉責め、射られ願望、埋葬嗜好、なめくじ愛・・と並べてみると、どれもこれも相当ディープな変態趣味のはずなのに、そう思わせない軽やかさと爽やかさ。
ホラー風味のあるアール・デコっぽいレトロモダンな絵柄といい、耽美なエログロ世界を想像させるのだが、その実態たるや甘酸っぱい青春の香りに満ちたラブコメなのだ。 ある意味、すごく奇妙な世界観。 これはこれでいいような気がする。
逆に、めくるめく性倒錯の小暗い浪漫に惑溺したり、真剣に変態性を追求したい向きにはお勧めできない作品ではあると思います。 ホントとにかく、クスクスってさせる可愛らしさ全開なのだから。
まだみんな変態慣れしてないヒヨっ子ばかりで初々しいのかな。 どうしよう変態かも〜変態かも〜ってドギマギしてたり、変態なんて概念もわからずキョトンとしてたり。 そもそも変態の前に恋愛初心者なのだけど、みんないきなり奇跡的といえるほどに幸せな巡り合いをしてるのだよなぁ。
一番好きなのは表題作の「變愛」かな。 絵的な緊張感とオチのギャップがよい。 てかこれ、実は変態じゃないんだけどね まぁ、そこも含めてのストーリーがキュートなのだ。 近代(大正?昭和初期?)な背景と絵の親和力も抜群で。
「ヒ・メ・ゴ・ト」は、素子さんより香山くんのがヤバい これも厳密には“たまたま”であって性癖ではない可能性が無きにしも非ず。 あと「紅い蛞蝓」の馬場さんの天然感がチャーミング♪
とりあえず絵に魅了されました。 真剣な画集出してくれたら買っちゃうかも
| comments(0) | - |